• 母乳を使った離乳食

  • 離乳食には決まりごとがたくさんあって、ちょっと身構えてしまうかもしれません。だけどいちばん大切なことは"食べるって楽しいな♪" "みんなと一緒に食べられて嬉しいな♪"と赤ちゃんに感じてもらうこと。
    そこで登場するのがこの「母乳をつかった離乳食」。肩の力を抜いて、気軽にチャレンジしてみてくださいね。

    ◇3ヶ月
    首がしっかりすわってきたら、たて抱っこにして、おひざの上で家族の食卓に赤ちゃんも参加してもらい、みんなと一緒に食事をする楽しさを教えてあげましょう。

    ◇4~5ヶ月
    食べることに興味を持ったら、さく乳した母乳をスプーンであげてみましょう。

    ◇5~6ヶ月
    さく乳した母乳にうらごししたカボチャやニンジンを入れて、ホワイトシチューに

    鉄を多く含む食材を意識してあげましょう。吸収率を高めるにはビタミンCを含む野菜や果物と一緒に食べさせてあげるとよいですよ。

    【母乳のパンがゆ】
    母乳にちぎった食パンを加えてパンがゆに

    【野菜と母乳のとろとろ】
    ゆでて裏ごししたニンジンや小松菜などの野菜を母乳でのばして食べやすく

    【きなこと母乳のおかゆ】
    おかゆに母乳ときなこをまぜてクリーミーに

    【母乳のリゾット】
    細かく刻んだ納豆やつぶした野菜を加えたおかゆに母乳をまぜてリゾット風

    【いちごミルク】
    小さく切ってつぶしたいちごに母乳を加えてデザート感覚



    Q
    母乳を加熱しても大丈夫ですか。栄養や免疫のメリットは保持されますか。
    A
    母乳を離乳食に使う目的は、赤ちゃんが慣れている母乳で離乳食を楽しくスムーズにはじめること。ですので、母乳の栄養学的・免疫学的側面は、あまり重視しないほうがよいでしょう。
    母乳から得られる栄養・免疫成分はあくまでも直接授乳から得ます。母乳をつかった離乳食は、母親と赤ちゃんの楽しみのひとつとして捉えましょう。

    Q
    牛乳や粉ミルクを使う離乳食のレシピ(スープやシチュー、ホットケーキ等)がありますが、代わりに母乳を使ってもよいですか。
    A
    もちろんです。牛乳は1歳以下ではあまりお勧めしません。あえて牛の乳でなくても、人の乳でいいでしょう。

    Q
    離乳食に使う母乳は、さく乳後すぐの新鮮母乳と一度冷凍して解凍した母乳、どちらでもよいですか。
    A
    可能であれば新鮮母乳ですが、余裕があるときに搾乳して保存しておいた冷凍母乳も離乳食に使うと有効活用できますね。

    Q
    野菜やおかゆの下ごしらえの段階で、先に母乳を混ぜて冷凍してもよいですか。
    A
    風味を考えれば最後がよいでしょうが、お子さんがよろこんで食べるのならどちらでも構いません。
    ※母乳バッグに食材を入れて冷凍することも可能ですが、レンジ加熱は×です。破裂や破損の原因になります。

    Q
    「母乳を使った離乳食」で、心がけることや意識することはありますか。
    A
    楽しんでいただく事が一番。
    たとえば、お母さんの召し上がったものの風味は母乳に出てきます。にんにくを食べたあとの母乳はにんにくの風味、にんじんを食べたあとはにんじんの風味。にんじんジュースを飲んだ後に搾った母乳でパン粥を作って、赤ちゃんがよく食べたら「これはニンジンが好物なのかしら!?」とにんまりする。こんな具合に、まずはお母さんがこのアイデアを楽しんでくださいね。



    ◆「離乳食」と「補完食」
    最近では「離乳食」のかわりに「補完食」ということばが使われることがあります。これは、母乳だけでは赤ちゃんの成長に追いつかなくなってくる栄養を「『補完』する『食』事」ということば。
    生後6ヶ月以降も母乳だけで育てていると、鉄、亜鉛、タンパク質など赤ちゃんに必要な栄養が足りなくなってきます。特に鉄分は、赤ちゃんのそれまでの蓄えが不足してきて貧血になることも。
    「離乳食」は赤ちゃんを「おっぱい(乳)から離す」というちょっと切ない雰囲気がありますが、こんなふうに考えるとママも赤ちゃんもしっくりくるかも知れませんね。

    ◆「最初はおかゆ」にとらわれないで
    直接お母さんのおっぱいを飲んできた赤ちゃんは、ほ乳びんで育ってきた赤ちゃんにくらべて、口の周りの筋肉が鍛えられています。ドロドロしたものが嫌いだったり、中には最初から舌と上あごでつぶせるくらいのかたさから開始できる赤ちゃんもいます。「はじめはおかゆ」にとらわれず、赤ちゃんのようすを よくみながら、食材のやわらかさを調節していきましょう。

    ◆おっぱいが先か、ごはんが先か?
    これまでは「まず食事、それから授乳」という指導が一般的でしたが、おなかがすいてイライラ状態の赤ちゃんに食べさせようとするのはむずかしいことも。慣れるまでは、おっぱいのあとに食事を与えた方が、赤ちゃんが落ち着いてスムーズに食べてくれることもあります。

    ◆おっぱいをやめたほうが食べるようになる?
    周りの人から、もう母乳をやめるように言われたりすることもあるかも知れません。もちろん母乳をやめる必要はありません。食がほそい赤ちゃんは、母乳をやめても十分な量の食事をすぐにとれるとは考えにくいからです。母乳はすぐれた栄養源。それに、母乳を続けることによるスキンシップがなくなってしまうのも、もったいないですね。あせらずにゆっくり。

    ◆やっぱりお母さんのおひざの上♡
    母乳の赤ちゃんは、いつもお母さんのおひざに抱っこでおっぱいを飲んでいます。なのに、いきなりお母さんと対面で座って、見慣れないスプーンで「アーン」されてもピンとこないかも。
    離乳食の最初のひとさじは、おひざに抱っこで大好きな母乳をスプーンでというのも方法のひとつです。



    水野克己先生(昭和大学 医学部 小児科学講座 主任教授)プロフィール
    小児科専門医 周産期(新生児)専門医。母乳に関して長年研究を行う母乳のスペシャリスト。
    著者に「これでナットク母乳育児」「赤ちゃん安心ナビ」「エビデンスにもとづく早産児母乳育児マニュアル」「母乳育児支援講座」など。